唐沢史比作曲 『山よ河よ天よ』

◎南信合唱連盟は創立50周年を迎え、記念として、地域を南下する天龍川の流域を網羅する、壮大な合唱組曲を、地元の作曲家である唐沢史比古氏に作曲を依頼した。出来上がった楽譜の巻頭に作曲者ご自身のコメントが掲載されているので、そのままここに記すことにした。楽譜の表紙は一目でこれとわかる物にしたかったので、いろいろイラストを考えたのだが、白く光る山々、とうとうと流れる天龍川、真っ青な空をイメージしている内に、最もシンプルな白線を山々の頂点として、青空を押し上げていくように並べてみた。
 
 2007年の秋、岡谷の佐原玲子理事長から南信合唱連盟50周年記念のステージに組曲を創作して欲しいとのご依頼があり、その場で引き受けました。故郷を題材として合唱作品を創ることは私にとってずっと前からの願いだったからです。
 組曲のイメージはすでにあり、「山よ河よ天よ」はすぐに用意できましたが、私自身の仕事の多忙さから、その他の曲は2008年の夏から2009年の春にかけて少しずつ作曲しました。最初は4曲で組曲を構成するつもりでしたが、2009年の3月にもう1曲を加え、5曲としました。
 伊那谷は私の生まれ育った故郷であり、今も毎日の生活をしている地です。諏訪や飯田の地も多く出かけ、様々な教育活動や演奏活動、創作活動をさせていただいています。素晴らしい山岳と河川、そして広々と高い空が広がっている自然と、四季折々の風光はいつも小さな私に宇宙の神秘と偉大さを投げかけてきます。
 私が指揮をさせていただいている2つの合唱団も南信の地で活動しており、年代や職業の違いを超えた人々が声を出し合い、響かせ合い、ハーモニーを楽しんで、毎年何回ものステージを創っては人生を謳歌しています。他の合唱団の皆様が合唱する時の顔も広々として輝いています。合唱の世界は素敵ですね。
 先年、辰野の馬渕先生がお亡くなりになり、素晴らしい先達の星がひとつ消えたことはとても残念でした。しかし、その合唱の灯火の明りと温かみは私達に伝わり、今も日常的に合唱を楽しむ仲間が大勢います。連盟が発足して50周年になるということは感動的なことです。歌を愛してやまない人々がこれほどまで心熱く歌い繋いできたエネルギーは素晴らしいことと思います。今歌っていることそのものが、また未来の合唱人へのメッセージとなり、合唱文化がより広く広がって、この地から世界中へと歌声のメッセージが伝わっていくことをいつも願っています。
 この「山よ河よ天よ」 −山岳と天龍に寄せて− は、素晴らしい大自然への感謝と、このような合唱を愛する方々に敬意を表し、贈ろうとして創作しました。合唱する歓びのひとつのコーナーに、この曲たちを添えていただければありがたいと思います。
 この創作に力を与えていただいた佐原玲子様、佐原武様をはじめ、林龍太郎様土橋修様、南信の諸合唱団の皆様に心から感謝いたします。