石井歓作曲 『花之伝言』

長野県民文化会館がウィーン楽友協会会館(ムジークフェラインザール)との姉妹提携を模索したのは1981年2月のことである。その中心にいたのが言わずと知れた林昭男氏である。彼の突拍子もない構想に皆が呆れている内に、それが実現していくのである。そして何と言っても嬉しかったのはウィーンにおいて開かれる調印記念念演奏会に岡谷合唱団が招待されたことである。この年から岡谷合唱団の常任指揮者に就任されたのが関屋晋先生だった。早速どんな曲を演奏するのかを検討する中で、関屋先生から「メインに《花之伝言》を持って行きたい」とのお話しがあった。198111月に放送され「昭和56年度文化庁芸術祭優秀賞」を受賞した新作で、団員はだれも聴いたことがなかった。中部地方の祭事による4曲からなる混声合唱組曲で、最も盛りあがる部分は10声にもなる難曲である。私のところに石井歓先生自筆のコピー譜が送られてきたのはそれから間もなくのことであった。自筆譜は読みづらくしかも分厚く大きな原譜を団員にコピーし配るのは至難の業と考えた。いっそ全てを写譜して綺麗にまとめてみようと、とんでもないことを考えついた。それから2ヶ月かかって写譜が完成し皆に配ることができた。後に作曲者の石井先生から「綺麗にできているねえ、ぼくに5冊楽譜を分けてくれない?」と言われたときは嬉しかった。

花之伝言 第一曲 「神舞い」

昭和57年 ウィーン楽友協会との姉妹提携記念演奏会(ブラームス・ザール)